溶接職人に聞く、溶接の魅力

溶接の魅力

ものづくりの現場を支える溶接技術。造船や自動車、各種機器の製造業をはじめ、ビルや橋、ダムなどの建設業など、
携わる分野は『身近なものから、宇宙関連のものまで』非常に幅広い。
世界に誇る高精度の技術は、熟練の溶接工の手作業によるもの。重量物を製作することも多く、かがみ作業や立ち作業
など、強靭な身体と耐久力が必要とされる仕事ではあるが、それをも上回る魅力いっぱいの“溶接”という仕事。
その魅力について、現場の声を聞いてみた。

インタビュー1人目の写真

40年経った今でも、高みを目指したい

溶接写真1 梅田工業の梅田さんは職人歴40年のベテラン溶接工。
溶接工を目指したきっかけを尋ねると、少し考えてから「気がついたらやっとったなぁ。」と答えてくれた。
きっと『ものづくり』の面白さ、奥深さに魅せられたひとりなのだろう。

経歴40年と聞くと『ベテラン』という印象を受けるが、梅田さんによると「まだまだ」とのこと。
笑みを浮かべながら話す姿が爽やかでもあり、その目からは日々の技術を磨く努力や苦労が垣間見える。

個人差はあるものの、10年で一人前と言われる溶接工の世界。
それでも金属の種類や形状によって溶接方法は様々であり、一人前になっても技術力向上の為の自主学習は必要不可欠。
もちろんミリ単位の計算も必要になってくる。
このような職人達の影の努力があって初めて、安全・安心な製品が私たちの手元に届くのだろう。

溶接写真2 日頃、なかなか考えが及ばないが、鉄を扱うのはとてもデリケートなようだ。
「溶接する時にセメントや埃、ガラスなどの不純物が入ってしもたら全部パーやから、そういう失敗ができへん所にはやっぱり一番気をつかうなぁ。」と梅田さん。
これだけを聞くと、溶接は苦労が多いだけの仕事だと捉えられるかもしれないが、決してそんなことはない。
『ものづくり』や『溶接』でしか味わえない魅力がある。
「そらぁ満足できる製品が出来て、お客さんが喜んでくれたら嬉しいし、やりがいも感じる。溶接はものづくりの基本やから。」
確かに、溶接はものづくりの基本的な接合技術だと言える。
また、作業の中で時には若手のアイデアが採用されることも。
「後輩や素人さんが柔らかい頭で思いもつかないアイデアを出すこともある!そういうのは勿論取り入れる。」
自身の先人だけではなく、上下など関係なく意見を聞き、積極的に取り入れる梅田さんの人柄と仕事への取り組み方は、他の職種であっても学びたい所である。

そんな梅田さんに今後の職人としての目標を尋ねると、、、
「もっともっと高みを目指して技術が上達するように。」と、やはりプロとしての言葉が返って来た。
職人不足が問題になっている溶接業界において、若手に特別なことは求めない姿勢。
むしろ、将来が明るくなるような指導をすることや、子どもたちに教えることで溶接工を育てていくことが大切だという。
梅田さんの『鉄離れさせない』精神が、梅田工業でつくられる製品や技術指導を通して堺の町から日本へ、そして世界へと広がっていくことを期待せずにはいられない。

「職人は皆プライド持ってやっている。人のためになることが嬉しい。」
時折、プロとして、職人としての厳しい表情を見せつつも、柔らかく印象的な笑顔で締めくくった。

インタビュー2人目の写真

溶接には、自分でつくれる楽しみとやりがいがある!

溶接写真3 堺の溶接工業を支える職人集団に熱い思いを聞いてみた。

溶接の技術は奥深く、習得するにはやはり努力が必要とのこと。
「溶接」とひと言で言っても、ただ金属をつなげればいいわけではない。
そこにはミリ単位の計算は勿論、電流や電圧を調節するための知識なども
必要になってくる。
「どのように溶けこませるか、どれだけ一体化させ、強度を上げるか。」
素人には想像がつかない、幅広く細かな知識と技術が必要なのだろう。
だからこそ、それらを駆使して製品をつくり、お客様に喜んでもらえたとき、大きなやりがいを感じる。

溶接写真4実家が溶接工場だった為、物心ついた時から溶接に触れ、職人としても30年の経歴をもつ職人さん。「まだまだ親父にも周りの先輩にも敵わない。」と苦笑いで語ってくれた。
他の道に進むことも出来ただろうが溶接の道を選んだ背景には、幼少の頃から育まれた
「ものづくり」の楽しさがあったのだろう。
「買わんでも、こんなん欲しいなって思ったもんが自分で作れるねんから。そらぁ楽しいわ!」そう話す職人さんの目は、少年のような輝きがある。
確かに自分の思い通りの「もの」が作れれば、愛着もわくだろうし大切にもするだろう。
「新しいものを買っては捨てる」、そんな今の日本の風潮が変わるかもしれない。

職人のグローブ協会としても将来の溶接工を育てていくことは大事にしている。
夏は暑く冬は寒い、軽い火傷は日常茶飯事。煙や炎にも耐える必要がある。
また、溶接姿勢は前かがみなど無理な体勢になることや立ちっぱなしも多く、腰など体に負担もかかる。
そういう過酷な条件のために辞めてしまう若者も少ないわけではないのだろう。
「すぐ辞めずに長続きする人、きっちり仕事をしてくれる人が来てくれたらなぁ。」
技術継承は簡単なようで難しい。時間もかかれば愛情も必要になる。せっかく育てた若者がすぐに辞めてしまうのはかなり辛いだろう。

「ものづくりの基本である溶接はなくてはならないもの。将来も仕事としてきちんと成り立たせていかなあかん。」

最後にも職人らしい、力強い頼もしい言葉での締めくくりとなった。

溶接工場の内部写真